国語科『ちいちゃんのかげおくり』の学習が単元の終盤を迎えた頃、子どもたち自身の独自学習(一人読み)の中から、ひとつの問いが生まれました。
「なぜ『ちいちゃんの命』ではなく『小さな女の子の命』なのだろう?」
物語の最後、5場面の描写に向き合いながら、子どもたち同士で言葉を交わし、作品の深層へと迫っていった「聴き合い」の様子をご紹介します。
1. 「昔」と「今」の対比から見えてきたもの
授業ではまず、「なぜ最後に急に、何十年もたった『今(現在)』の話になっているのか?」という子どもたちの問いから対話が始まりました。
子どもたちは、作中の描写から「昔」と「今」を丁寧に比べ始めます。
昔(ちいちゃんの時代): 戦争中で笑顔も少なく、悲しさや寂しさに包まれた世界。けれど、その厳しい状況をみんなで乗り越えようとする思いや、家族と一緒に過ごせるささやかな喜びがあった。
今(現代): 友達や家族と自由に遊べて楽しい世界。けれど、その平和が「当たり前」になってしまっている。
さらに子どもたちは、「かげおくりをしていた頃のちいちゃんたち」と「5場面で登場する今の青い空の下で遊ぶ子どもたち」の姿を対比させていきました。
ちいちゃんたちは戦争という悲しい現実の中で、家族と一緒にいられる喜びや「きらきら」した思い出を大切にしていました。一方、今の私たちが家族や友達と当たり前に笑い合えている姿を最後に描くことで、「今の楽しさや平和は、昔の悲しさを乗り越えた上に成り立っていること」「この平和を大切にしてほしいこと」を伝えようとしているのではないか、という意見へと深まっていきました。
2. 「ちいちゃんの命」ではなく「小さな女の子の命」の理由
対話の最後、子どもたちは一番最初の全体の問いである「言葉の表現の工夫」に迫っていきました。
もし本文が「ちいちゃんの命が空に消えました」と書かれていたら、ちいちゃんという特定の1人だけが亡くなったという印象にとどまってしまいます。
けれど、あえて「小さな女の子の命」と書くことで、子どもたちは次のような大切なことに気づいていきました。
戦争というものの本当の恐ろしさや悲しさが、より強く伝わってくること。
命を落としたのはちいちゃん1人だけでなく、他にもたくさんの小さな子どもたちや人々が犠牲になったのだと、想像を広げさせられる表現になっていること。
あまんきみこさんの言葉を通して、子どもたち自身が「戦争の恐ろしさ」や「今の平和のありがたさ」を自らの問題として感じ取ることができた瞬間でした。
3. 学習を終えた子どもたちの振り返り
単元の最後に書いた子どもたちの振り返りからは、一人ひとりの読みの深まりと成長が伝わってきます。内容ごとにまとめてご紹介します。
【作品のメッセージや平和への思い】
最初はただの悲しいお話だと思っていたけれど、今の自分の生活や平和が当たり前ではないんだと分かりました。
「それから何十年」という言葉は、今の私たちに平和のありがたさを知らせるためのメッセージなのだと理解できました。
【表現の工夫への気付き】
「ちいちゃん」ではなく「小さな女の子」と書くことで、戦争でたくさんの命が消えてしまったことや、戦争の本当の恐ろしさを伝えるためだと気づきました。
ちいちゃんたちと、今の自分たちをつなげるためにこのような書き方をしているのだと分かりました。
【聞き合い(対話)を通した学びの深まり】
自分で考えていたことだけでなく、友達の発言や考えを聞くことで、自分一人では気づけなかった表現の意味が分かりました。
みんなで話し合っていく中で、自分の疑問が解決できてとても嬉しかったです。
自分たちの疑問を出発点にし、友達の言葉に耳を傾けながら作品の核心へと迫っていった子どもたち。今回の『ちいちゃんのかげおくり』の学習は、言葉の響きや工夫を読み解くだけでなく、平和や命の尊さを自分ごととして考える、かけがえのない時間となりました。

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